一回ぐらい

2003年6月2日
「一回ぐらい、許さなきゃならんとかな」
彼女が、つぶやいた。

当時同棲していたものの、彼女は普通の会社でOLとして勤務、一方俺は会社を辞めてバーで鍵盤を弾く生活をしていた。

当然の事だが、俺は夜の仕事だから帰りが遅い。
日が昇ってから帰宅する事も多かった。

事件が起きたのは俺の誕生日の晩。
俺は客にしこたま飲まされた。
酒の弱い俺は、もちろん演奏なんて出来るわけが無い。
いや、動く事も出来なかった。

気が付いたのは次の日の昼をかなり回った頃だった。
俺は店のソファーで目が覚めた。

やましい事は何一つ無かった。
彼女は心配してくれていた。
そして、逢った最初の言葉が
「一回ぐらい、許さなきゃならんとかな」だった。

正直に話した。
繰り返し言うけど、女の子に介抱してもらったような気はするがやましい事は何一つ無かった。
彼女が少し微笑んだ。
「酒臭い」って。

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臣

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